次のページ(2話「ユーリの里帰り」)
 
「天は赤い河のほとり」パロディ小説(1)

「テシュプの名をいただく新たな都市国家(??)」



ユーリのねごと
ユーリ・イシュタルさまがタワナアンナになられて数年。
賢帝ムルシリ2世のもと、ヒッタイト帝国は平和と繁栄を享受していた・・・。

ここはハットゥサの王宮。ユーリと皇帝陛下(カイル)が朝食を召し上がっている。そばにお仕えしているのはハディとリュイ、シャラ、それにキックリである。

「ユーリ、最近寝言で『ディズニーランドに行きたい』とうなされているようだが、ディズニーランドとは何のことか」
「ううん、何でもないの」(カイルに寝言聞かれちゃったかなぁ。最近よくにみるけど・・・)
「私に隠し事をするとは何事か。やましいことでもあるのか。」
 「そ、そんなことはないけど・・・・」

「ユーリさま、私たち3姉妹にもお聞かせ下さい。」
「私も日本のディズニーランドという楽しそうな所の話を聞きとうございます」

ユーリは、「夢と魔法の王国」ディズニーランドの事を話し出した・・・・お城があって、乗り物があって、キャラクターがいて・・・・・・

「よし、このハットゥサの都市の隣に建設しよう。そのディズニーランドとか言う都市国家を。」
「カイル、それはいけないわ。いくら私が日本を懐かしんで寝言を言ったのかもしれないけど、そんな無駄遣い、国民のためにならないわ」(ディズニーランドは都市じゃないのに)
「ユーリ、私はユーリを愛している。ユーリの望むものは何でも手に入れよう」
「カイル、お願いだからやめて。私、そんな自分のためだけのテーマパーク、欲しくない」
「ユーリ・・・・」(おまえの無欲なところが好きだが、それにしても無欲すぎる・・)
 
 
 

イル・パーニの策略???
「ユーリさま、皇帝陛下はユーリ様だけのためをおっしゃって新都市建設を決めたのではありません」
「イル・パーニ!!」(いつの間に来たのかしら??)
「ユーリさま、最近の我が国や友好国の国情、ご存じでしょう」「ええ」
「皇帝陛下とユーリさまのお力で我が国や周辺諸国では全く戦争が無くなりました。そのため国は平和になり、極めて安定しているのですが・・・」
 「平和が悪いことなの??。私たち命がけで手に入れたのに」
「いえ、とんでもない。ただ、戦乱で焼かれた家を建て直す大工、戦いに必要な剣や馬車を作る職人など大勢の人の仕事がなくなってしまったのです。」

「新都市建設によってこれらの者に職を与えることができます。さらに、ユーリさまのお考えの都市にはヒッタイト国内のみならず、全世界から人が集まるので、交易も発達し、ヒッタイトの特産品も売れることでしょう。(観光地値段で)」
 
 

建設へ
「ユーリさま」「是非建設を!!」
陛下のリビングルームにはいつの間にか数多くの臣下が集まっていた。
ユーリは何回か通ったことのあるディズニーランドについて、さらに多くを語った。
入り口が一つしか無く、お客さんは平等な体験ができること。真ん中に広場とお城があること。広場からそれぞれのテーマランドに行くことができること。などなど
臣下達はさっそくがやがやと打ち合わせをはじめた。

「ところでユーリ」「なあに、カイル」「さっきから『ディズニー』という名をよく口にするが、彼は夢と魔法を操るという神なのか」
「そうね。(一部マニアの間では)神さまのような存在よ
「陛下、我が国の最高神は『テシュプ』であります。そのような邪神を祀ることは・・・」
「イル・パーニの言うことはもっともだな。我が国の最高神は『テシュプ』である。ユーリ、すまぬが都市の名前は『ディズニーランド』ではなく、『テシュプランド』にするぞ」
「はい、テーマパークの中身さえきちんとしていただければ、異存はございません」(都市じゃないのに・・・)
 

技術者の困惑
数日後、王宮内の一室では各国の技術者が集まって頭を抱えていた。
「ユーリさまの日本とは文明の差がありすぎる。我々にはコンピューターはおろか、電気すらないのだ。蒸気の圧力に耐えられる機関もないし、ゴムやプラスチック、アルミも無いのだ。」
「まあ、同じものは無理だとしても、できる限りやってみよう。われわれにはイシュタルさまがついていらっしゃる」
 

ユーリ、設計室へ
「皇帝陛下、ユーリさま。」とキックリが呼びに来た。
ユーリとカイルは王宮内に設けられた設計室へ向かった。ヒッタイトの主立った者へテシュプランドの概略を説明するとのこと。
「設計技師たち、みんなありがとう」と、ユーリ。(ヒッタイトの文明で、どこまでディズニーランドが再現できるのかしら)

「入り口を入ってすぐに、各国の商品を商う店が連なります。」(ワールドバザールっていったところね。)

「市場を抜けると、大きな広場に出るようになります。広場には大きなお城がございます。このお城、外観は美しいのですが、中はヒッタイトに害した者の肖像や石像を飾り、来た者を驚かす仕掛けにございます」(シンデレラ城ミステリーツアーのことかしら)
「お城の名前は『イシュタル城』といたします」(まあ!!!)

「こちらは、長い曲がりくねった河に、エジプトより取り寄せたワニや東方のインドより取り寄せた象を配置いたします。船はエジプトの川船。漕ぎ手は乗客に楽しく語りかけるわけです。」(まあ、ジャングルクルーズ)

「こちらは、弓矢にて標的を打ち落とす遊技でございます。お相手をするのはイヌの化身でございます。弓兵隊長シュバス、よろしく頼む」「はっ」(これって、ウエスタンランドシューティングギャラリー??)
 

「この船は、先ほどの船とは異なり、エジプトの外航船を改造した大型の3階建ての船にございます。(蒸気船マークトゥエイン号??)

円形の空き地には、戦車を引けなくなった老馬を集めます。老馬といえども、子供を背中に乗せて同じ所をぐるぐる回るくらいなら役に立ちましょう。」(シンデレラのゴールデンカルーセルは本物の馬なのね)

「こちらは曲がりくねった人工の道を造り、戦車を走らせます。ヒッタイトの戦車は鉄で補強しているので、子供でも安心して乗れます。戦車隊長カッシュ、心して運営せよ。」「はっ」(グランドレースウエイ・サーキットのこと??)

「こちらのステージでは、世界各国の楽士が演奏をいたします」(ショーベース2000のつもりかなぁ。各地の楽士が交代で演奏する施設なんてあったのかしら。)

「テシュプランドの周囲には、宿屋を設置します。宿屋は免許制とし、遠来の客も安心して逗留できるようにいたします」(オフィシャルホテルまで!!!! )
 
 
 

テシュプランドは全てのゲストに平等??
「ところで、ユーリさま。テシュプランドに大勢の客が来ると、乗り物に行列ができることが予想されます。」
「うん。(ディズニーランドだって、何時間も並ぶことがあるのよ)
「各国からやってくる王族も並ばせるわけには行きますまい。王族が横入りするための秘密の通路を・・・」

「そんなもの作ったら、民はどう思う。身分ってのは上の者が下の者を守るためにあるんじゃないの!?・・・・」
「しかし、各国の王族を粗略に扱うわけには」

「うーん。それでは、王族専用のダイニングルームを作ればどうだろう。優秀な女官を33人ほど置いて、並ぶのに疲れた王族はそこでもてなすようにすれば」「さすが皇帝陛下。すばらしいアイデアです。」 (これって、『クラブ33』???。そこまで作るの??)
 
 
 

テシュプランドのバリアフリー
「ねえ、イル・パーニ。」
「はい」
「ここには、体に障害を持った方も来られるようにしたいの。杖をついた人が歩けるように段差は少なく、お年寄りのためにベンチを多く、目の不自由な方には立体の地図を・・・」
「御意。早速手配いたします。目の不自由な方の立体地図は青銅板で作りますが、ユーリさま、粘土板で原板を作っていただきますか。民は感激することでしょう」
「ええ」
ユーリの目の前には四角い大きな粘土板が用意され、ユーリは木べらで立体地図をつくりはじめた。
 
 
 
 

ユーリの小さなわがまま
立体地図の原板を作り終わったユーリ、ある思いを秘めていた。
「イル・パーニ。一つだけわがままを聞いてもらえるかしら」
「はい」
「私の生まれ育った日本の工芸品を売る小さな店を出したいの」
「御意。そうそう、せっかく粘土細工の道具が出ているのですから、お店の看板も粘土板でお作り下さい。後ほど、青銅板に作り直します」
この店では、日本の素朴なおもちゃを売りたいな。こま、竹とんぼ、凧、お手玉・・・・。後で、職人さんに作り方を教えなきゃ・・・・

そんなことを考えながら、ユーリは粘土板に向かった。
子供がぶつかってもいいように、形は丸くしよう。店の名前は・・・・・ディズニーランドの「千葉物産館・美術工芸」でいいのかなぁ。
あっ、それよりも私が今まで大切にしていたもの。忘れるところだった。

ユーリは、丸い粘土板に『鈴木夕梨商店』と忘れかけていた漢字で刻むと、外にいた兵士に言った「青銅板の工房へ運んで」「はっ」
 
 
 
 
 

働く人たち
建設も進み、ユーリは建設現場を視察した。
「みんな、おつかれさま」
「イシュタルさま」「タワナアンナさま」
「私たちは疲れを感じません。敵が攻めてくる心配なく仕事に打ち込めてしあわせです。」
「やっぱり、働くことはいいことですね。」
(そうよね。仕事がなくって家でごろごろしているのって、良くないよね)

「ねえ、工事班長さん。あの大きな黄金の像は何??」背丈の3倍ぐらいある巨大な像の工事現場を見たユーリは尋ねた。
「ユーリさまがメモに書かれた、ねずみの化身でディズニー神のお使い『ミッキーマウスさま』です。皇帝陛下は数ある邪神の中で、ミッキーマウスさまの像の建立のみ認めて下さったのです」
(カイル・・・私のメモを勝手に持ち出して・・・・それに、やっぱり私のために作っている、ディズニーランドを)

ユーリは戸惑いと幸せを心に秘め、作業員の歓声に見送られて工事現場を後にした。
が・・・・・・・
 
 

ユーリ、大きな問題に気がつく

このキャラクター「シュンシューンとミニイ」の正体は・・・こちらへ

「さっき、技師の人は『ねずみの化身ミッキー』を祀るって言っていたけど、ミッキーマウスはディズニーの著作物著作権で問題はないかしら」自室で着替えているユーリはハッと気がついた。「キックリ、アスラン2世の用意を。あと、3姉妹も」「はっ」「はいっ」
ユーリが向かったのは元老院の文官、シュンシューン・イナリの自宅。
「これは皇妃さま。お呼び出しいただければすぐにお伺いしたのに」シュンシューンは愛くるしい娘ミニイを伴ったまま、あわててユーリ一行を迎えた。
「それより、今気がついたの。私って著作権のことすっかり忘れていた。ミッキーの黄金像は完成寸前。ディズニー社に見つかって取り壊すとなったら 職人さんの努力も水の泡。どうしよう」ユーリはぶるぶる震えた。戦争の女神で、かつ前近衛長官も、こういうことになると勝手が違うようだ。
(ユーリは、あの事件を思い出していたのだ。ここに来る約7年前、滋賀県の小学生がプールに描いたミッキーのイラストを、ディズニー社が消すように命じた事件を。)

シュンシューンはユーリに語りかけた。「皇妃さま、著作物は公表後50年(※)は著作権法で保護されるというのはご存じですよね」「ええ」
「それなら話は簡単。全くご心配はございません。私たちはディズニー神が『ミッキーマウス』を公表する数千年も前にそれを使った銅像を造り、お祀りしようとしているのですから」

「そうか、公表前なら著作権は及ばないのね。」「御意」
「ユーリさま、よかったですね」と、ミニイの頭をなでていたリュイ。
にぎやかに王宮に戻るユーリ達を見送り、シュンシューンは自室に入って気がついた。
「あ゛〜っ、しまった。説明し忘れたぁっ。ヒッタイトは『万国著作権条約』にも『ベルヌ条約』にも加盟していないし、著作権法も未整備だからアメリカ合衆国の著作物の著作権は関係ないんだぁ〜っ」
(※)団体名義の場合
 
 
 

テシュプランド・オープン
ヒッタイトのハットゥサ郊外に「テシュプランド」はオープンした。
オリエントの各国より、子供から年寄りまで大勢集まった。
来た客は、異国の神の使い『ミッキーマウス』黄金像に感嘆し、乗り物やキャストと呼ばれる使用人のサービスに酔いしれた。

中でも人気があったのが「鈴木夕梨商店」で売られている日本の玩具。子供達は目を輝かせ、飛ぶように売れていく。
「それにしてもユーリ」カイルは店の裏でユーリに語った。「山から採れるタダ同然の材料からこれだけの売り上げを上げるとは」
(いや、そんなつもりではないのに。ただ、日本がなつかしかっただけ)
ユーリさま手書きの丸い看板も人気の的である。
「これが異国の文字かぁ」
入場料を払うのがやっとの貧しい人たちも、看板を眺めてイシュタルさまに思いをはせるのである。
 
 

ユーリ、使用人を叱る
「ねえ、カイル。私、中で遊んでいっていい」
「ああ、私は政務があるので王宮に戻るが、三姉妹とカッシュがそこにいるから、一緒に回るがよい」
(もぉ〜っ、カイルと回りたかったのに)
それでも、ユーリたちはテシュプランドを回り始めた。
「これに乗ろうか」それは、エジプトの小舟に乗って川巡りをする乗り物。
「けっこう待つね(グレゴリオ暦で1時間くらい)。」「でも、おしゃべりしていればあっという間よ」

しばらく並んでいると、列の中から「イシュタルさまだ」「タワンアンナさま」
「皆の者、皇后陛下、ユーリ・イシュタルさまのお越しであるぞ。控えよ」と、この様子に気づいた使用人
並んでいた民衆も「使用人さんの言うとおりにしよう」「皇后陛下、私の前へお進み下さい」

こうして、ユーリたちは使用人や民衆に勧められて、すぐにボートに乗ることになった。
「ユーリさま、良かったですね」
「こんなこと良くないよ。リュイ。皆が平等に遊べるように作ったのに。みんな並ぶのに疲れているのに・・・私たちだけラクなことできる理由なんて、知らない」
「ユーリさま・・・・」
ボートを下りたユーリは使用人の責任者を呼びだし、厳しく叱りつけたのは言うまでもない。
「順番抜かしを許さぬように。皆平等に」と
 
 

テシュプランドの末路
このように、鳴り物入りでオープンしたテシュプランドだが、ユーリ・イシュタル皇后陛下、賢帝・ムルシリ2世が相次いでこの世を去ってから、数十年。
シン・ハットゥシリ3世とウルヒ・テシュプ(ムルシリ3世)の間で内戦が始まると、キャストと言われた使用人たちの訓練も行き届かなくなった。ネ ズミの化身の黄金像が北方の盗賊団に略奪されたときも、命をかけて守る者はいなかった。当然、評判は悪くなり、客足は遠のくことに。この時、元老院は 「(昔は良かったが、現在の状態のテシュプランドは) テシュプ神を侮辱している」と閉鎖勧告を出し、閉鎖の憂き目にあった。さらに、国自体も滅び、ユーリさまが自ら描いた青銅板と共にテシュプランドは土に埋 もれてしまった。
 
 

20世紀半ばのある日の出来事
映画の帝王への階段を登りつつある男がヒッタイトの遺跡にやってきた。
「痛っ」とつまづいた足下を見ると四角い形をした1枚の青銅板が。
何か、庭園か遊園地の図面にも見える。 
入り口は一つだけ。真ん中にお城のある広場、広場の周囲にはテーマ毎の庭園。
「これだ!!!」その男はひらめいた。彼はむさぼるように青銅板を書き写した。観光客が遺跡の遺物を無断で持ち帰ることは禁じられているのだ。
「おーい、ウ○ルト」男の友人が丘の向こうから呼んだ。「早くしないとバスが出てしまうぞ」
その男は、青銅板を眺めて思った『私がこれを持ち帰ることはできないが、誰かに真似をされたら大変なことになる。』

そして、傍らの井戸に青銅板を放り込むと、友人の元へ急いだ。
こうして、デシュプランド唯一の地図は、トルコの地下水脈の底に沈んだ。

のちに、ア○○カの西海岸に「テシュプランド」そっくりのテーマパークがオープンするのだが、考えたとされる人以外は誰ひとりとしてテシュプランドのことは知らなかった。
 
 

21世紀初め頃のある日の出来事
高名な考古学者、氷室聡教授と教授の愛妻、詠美は興奮の中にいた。
古代ヒッタイトではあり得ないはずのハートの形が描かれた粘土板。発掘最終日にとんでもないものを見つけてしまった。きっと学会は大騒ぎになるかもしれない。
「教授。日が沈むとテロリストに会う危険が高くなります。早くバスにお戻りを」「分かった」
助手達はすでに発掘品をトラックに積み終わり、バスの回りで待っていた。教授夫妻もバスに向かった。

っ!!」「どうした、詠美」「今ね、足の裏がすごく熱くて」「地熱でもあるのかな」
「それとは違う感じ。この下に何かありそうなの。掘ってみたいな」
「詠美のカンが鋭いのは分かっているが、早くバスに乗らないと皆に迷惑がかかる」
「そうね。今日発見した粘土板の整理もしないといけないし」

 「毬絵に預けてある子供達、元気にしているかな」
 「ええ、昨日の電話では元気そうにしていたわ。で、ディズニーリゾートに一緒にいく約束、覚えているよね。お休み取れるの?? 」
 「ああ、もちろん。子供達はジャングルクルーズに乗りたがっていたなぁ」

詠美が熱さを感じた数十センチ下の地下には、丸い銅板が埋まっている。そこには日本語で「鈴木夕梨商店」と書かれているのだが。
 
 
 
 

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キャラクターの正体(1)・・

元老院文官、シュンシューンは管理人しゅんしゅん、シュンシューンの娘のミニイはしゅんしゅんの娘、みに〜をモデルに創作しました。

私のサイトでは、家族をモチーフにしたキャラクターを登場させており、そのパロディというわけです
オリジナルはこちら


左から娘ミニイ、息子ミツキシュンシューン・イナリ、妻アリエル・ベンザイテンです


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